تسجيل الدخول「ルシフェル様! 夜が明けたら、早速バルム砦を奪還しましょう!」
適当呪文で『六六六の獣』をインフェルノに送還していると、ベルが提案してきた。
「そう言えば、そこが落ちたとか伝令が言っていたな。どのくらいの距離があるのだ?」
「およそ四十セグタルです」
何だよその単位。
「む。ジュデッカが永かったものでな。その……セグタルとやらで例えられると分からぬ。そうだな、乗り物でどのぐらい時間がかかると訊き直そうか」
「馬で行けば、およそ丸一日です」
馬か。文明レベルは、やはりそのあたりなのか。でも俺、馬なんて乗ったことねえよ。
「その、あれだ。そこは馬車で頼む。ジュデッカが永くて馬の乗り方はとんと思い出せぬのでな」
でまかせで言った割には凄え便利ワードだなー、「ジュデッカが永かった」って。
「畏《かしこ》まりました。用意させます!」
「うむ。しかし、ここの守備はどうする? また天使が襲ってこないとも限らないだろう」
「はい。そのことですが、選りすぐりの少数精鋭でバルム砦に向かおうかと思います。ルシフェル様のご負担が大きくなりますが……。シトリー! ウィネ! フォル!」
ベルが背後の魔導師隊に振り向き呼びかけると、三人の少女が前に進み出た。
「ボクはシトリー・カイムです! で、こっちが……」
「ウィネ・ストラス……です」
見事なAAカップの、快活そうなブロンドショートカット猫耳&猫尻尾少女が威勢よく敬礼する。彼女に促され、Aカップぐらいのシルバーブロンドショートカット猫耳&猫尻尾少女が、もじもじと消え入りそうな小声でシトリーの背後に隠れがちに続いて自己紹介。
「フォル・ネウスです。今後とも宜しくお願い致します」
長いブロンドの、現代風の眼鏡をかけたクールな雰囲気の少女が、眼鏡のブリッジをくいと上げながら言う。
「この三人と私、そして世話役一人で、ルシフェル様と共に出立する予定です」
そんな陣容で大丈夫か? まあ、俺が居ればどうとでもなる気はするが。
「宮殿にご案内致します。ルシフェル様、こちらへ」
ベルが後に付いてくるよう促すので、それに続いた。
◆ ◆ ◆
翌朝。宮殿にて皇帝バフォメットとの謁見後、アニメや漫画でしかお目にかからんような最高級のベッドで一睡した俺は、外でチュンチュンと鳴く小鳥の声で目を醒ました。この世界でも、朝は雀っぽい鳥なんだな。
それにしても、自室の安ベッドと違って寝心地の良いことよ。一方、昨日出された食事はパンとハムっぽい肉とついでに酒の質素なものだった。昨日の皇帝や臣民の熱烈歓迎ぶりや、こんな部屋に通すということは最大限の歓待をしているのだろうから、食糧事情がかなり厳しいのだろう。
呼び鈴を鳴らすと、ノックの後、小柄な黒髪おさげの、いかにもな格好のメイドが入ってきた。ただし、まだ十二歳の
「お早うございます、ルシフェル様」
「うむ。早速だが、朝食を所望する」
「はい! 直ぐに用意させます!」
彼はぺこりと頭を下げ、ぱたぱたと駆けていった。さて、飯までの暇つぶしに今後に備えて、中二魔法詠唱のレパートリーでも考えておくか。
◆ ◆ ◆
簡素な朝食を済ませ、ユコに案内されて城門に着くと、馬車とベル、そして多数の見送りが待っていた。俺の姿を見ると、皆が一斉に
ベル、ユコと共に馬車で揺られて、城門付近で騎乗して待っていたシトリー、ウィネ、フォルと合流し、バルムへと向かう。しかし、馬車の乗り心地はどうにも今いちだ。空気タイヤというのは優れものなのだなあ。
道中、対面に座っているベルに対し、必殺ワード「ジュデッカが永かった」を盾に、色々とこの世界のことを聞き出した。
太古の昔、神を裏切り人類に知恵をもたらしたした漆黒の堕天使ルシフェル・アシュタロスの伝説がある。彼は大天使たちによって深淵の最奥ジュデッカに封印された。二十年前、当時絶大な権力を持っていた教皇を倒して、人類と神との敵対関係が明確になった。
またそのすぐ後、人類の粛清に現れた『チェルノブイリ』という大天使を倒した際に遺された呪いで、若い女しか魔力を持てなくなった。
それ以降、天使による大攻勢が行われている。
諸外国と連携して天使と戦っているが、ほぼ壊滅状態である。
文明レベルはやはり中世ヨーロッパあたりだが、眼鏡や印刷、遠洋航海、衛生や人権意識など、一部発達した技術・概念がある。
俺達が会話に使っている日本語が、この世界では魔法語であると同時に上級会話言語。ユコはメイドにしては教養があるので使えるらしい。
天使は魔法でしかダメージを与えられない。
天使は東の空から来る。
セクンダディと名乗る、天使を指揮する七人組の大天使が居る。
分かったのは、このあたりだ。夜はテントを張り休み、夜が明けると森の中の道を征くという道のりを経ていると、先行していたシトリーが馬を下げてきた。
「ルシフェル様、ベル様。前方に天使を発見しました」
「ご苦労。ルシフェル様、この先馬車は目立ちます。非戦闘員の御者とユコ共々ここに待機させますので、ルシフェル様は私と一緒に馬にお乗り下さい」
ベルの提案で、二人乗り用の追加把手を鞍に取り付け、俺とベル、ウィネとシトリーがそれぞれ二人乗り、フォルは引き続き一人乗りで、木陰に隠れるように行軍することになった。馬の二人乗りは、手綱を持つ人間が後ろに乗るものらしい。従って、ベルのたわわな胸が何かと背中に当たって、ラッキースケベ状態である。照れ臭いじゃないか……。
「ルシフェル様、間もなく森を抜けます! 戦闘のご準備を!」
背後からベルが語りかけてくる。一行は脚を早めて、森を抜け開けた草原に踊り出て、そのまま障壁展開の魔法と光の矢の魔法で奇襲をかけた。彼方に石造りの城塞が見える。あれがバルム砦か。俺も、戦いのお供『六六六の獣』を召喚する。奇襲に気付いた天使たちが雲霞のように押し寄せて来るが、獣のアシストとベルたちの魔法に加え、俺の爆裂魔法で次々と叩き落としていく。
しかし、快進撃を阻むかの如く、いきなり地面から石塊が突き上がり俺たちは跳ね飛ばされそうになったが、
「俺様はセクンダディが一人、ザカリエル! その黒衣、ルシフェルと見た! ウリエルの仇を討たせて貰う!! 剛頑なる石岩よ、矢弾となりて敵を討ち滅ぼせ!!」
「
ザカリエルが虚空に大量に出現させた岩石弾と、俺の呼び出した炎龍が激しく激突する。競り勝ったのは炎龍の方だった。岩石弾を蒸発させた炎龍たちは、そのままザカリエルを縛り上げて肉体を焼き、ザカリエルは苦痛の叫びを上げる。
「せめてもの情けだ、楽にしてやろう。爆ぜよ!!」
炎龍が一斉に爆裂炎上し、ザカリエルは断末魔と共に蒸発した。
残りの天使を始末して砦に着くと、出迎えたのは魔導師隊の死体の山であった。凄惨さに思わずえずきそうになるが、みっともないところを見せたくないので、ぐっと我慢する。ベルたちが黙祷を捧げるので、これがこの世界でのポピュラーな死者の送り方なのだろう。俺もそれに倣い黙祷する。同時に、もう一つ察したことがある。この世界には、蘇生魔法などという便利なものはないのだと。手厚く埋葬したいところだが、なにせ人手が足りない。補給物資を残して、俺達が乗ってきた馬車を伝令として飛ばし、後詰を待つ。
奪還した砦を死守するのが当面の目的ではあるのだが、空を飛んで魔法で攻撃してくる天使相手に、あまり役に立たないと言えば立たない代物ではある。死体と一緒に二日間過ごすのも気分のいいものではないので、やや離れた場所で野営することになった。
馬車に乗り、進軍してきた道を辿ってラドネスに戻ってみれば、盛大なるファンファーレの嵐。途中のバルム砦での歓迎ぶりも相当だったが、やはり規模が違う。質素に生きていたであろう人々も、今日は大はしゃぎだ。ポテチをつまみに例の謎酒をかっ喰らっている人々の多さよ。今後必要だったはずの兵糧が浮いた分を、放出しているのだろう。「ベル。俺からこの国の人々に伝えなければならないことがある。場を設けてもらえないだろうか」「御意にございます。早速手配させましょう」 皇女が馬車から首を出し、傍らで馬に乗って歩いていた魔導師に要件を告げると、その魔導師はだく足で宮殿へと向かっていった。 さて、これからがきっと大変だな。 ◆ ◆ ◆ 宴の後、演説の場が用意できたと言うので宮殿のテラスから広場を見渡すと、一面人、また人という状態である。これは少し緊張するな。「皆に告げなければならないことがある。俺は今この時を以て隠棲する。今後、俺を崇め奉ることはまかりならん!」 激しいどよめきが沸き起こる。中には悲鳴を上げる者までいた。まあ、こうなるよな。群衆の動揺を鎮めるため、手をかざす。「この度の争いは、俺のような異世界から来た者たちが神を僭称し、世界を意のままに操ろうと己の考えを強制したことに起因する。俺がこの国、いや世界の営みに口出しをすることはその愚を繰り返すことに他ならないと考えた。皆は、自らの頭で考え、より良いと思う世界を築いてほしい。以上だ」 再度のどよめき。しかし、先程よりは落ち着いてる気がする。振り返ると、ベルがそのつぶらな瞳を更に丸くして絶句していた。更にその背後には、いつもの七人が神妙な顔で控えている。あのマルコまで大人しいとは、異世界人でも降ってくるかな。「という訳だ。まあ、たまには顔ぐらい出すよ」 肩をすくめると、ベルがぽろぽろと涙を流すではないか。「申し訳ありません。突然のお達し、どう受け止めたものか……」「すまないな。今後の身の振り方を熟慮したらこういう決断になった」 指で姫君の涙を拭う。我ながら気障だな。「ルシフェル様、もう我々を導いてくださらないのですか!?」 フォルの痛切な叫びが響く。「そうだ。必要以上のことはしない。皆は好きだが、ラドネスだけを贔屓すればきっと人類の新たな災いとなる」 後ろ髪引かれる思いで
あの気分が悪くなる天界の出入り口を抜け、一路ザイドハーマを目指す。ヴェイヴァルはエテメンアンキが見つかったあとでは維持する価値がないので、ベルたちもシェム将軍の部隊に合流する手はずになっている。 しばらく飛んでいると、すでに懐かしさすら覚えるあの朽ちた港街が見えてきた。潮風の匂いが鼻孔をくすぐる。 虚空に花火のようにラドネス語で巨大な「勝利」の文字を描く。これで望遠鏡を持った見張りが気づいてくれるだろう。 距離が少し縮まってくると、風に乗って三十万の歓声が聞こえてくる。 魔導師たちが諸手を挙げている姿が視認できるようになった。先頭付近で落ち着きなく飛び跳ねてるのは……マルコ以外考えられない。すでにベルたちが合流しているということは、思いの外時間が経過したらしい。抱き合って喜んでいるものまで居て、女所帯ならではの光景だなと益体もない事に思いを巡らせてしまった。 ◆ ◆ ◆「ルシフェル様、ご帰還お待ちしておりました!」 跪く群衆の前に舞い降りると、制服姿に戻っている先頭のベルが面伏せたまま言葉をかけてくる。彼女の後ろには久しぶりに会うシェム将軍が伏せている。そのやや後ろで数人がかりで頭を押さえつけられてるのは……まあ、確認するまでもないな。「堅苦しい挨拶はしなくていい。皆、面を上げ、楽な姿勢になるといい」 言葉に従い、皆が立ち上がる。「色々と話したいことがあるが、まずは、こう言っておこう。神はもう居ない! 我らの勝利だ!」 再び巻き起こる黄色い歓声。いやはや、三十万人もいると凄いボリュームだ。「ルシフェル様、我々は救われたのですね。どれほど感謝を述べたら良いのか分かりません。ラドネスの民を代表して、感謝いたします……!」 拭っても拭っても溢れてくる嬉し涙を止めることができないまま、ベルが述べる。彼女を見ていると、パダールでのあの夜を思い出す。人々の思いをその細い肩に背負った皇女。君は本当に優しくて責任感の強い女性だ。「勝利を信じておりました! 軍を預かる身でありながら、ルシフェル様のお力に頼り切る形になり、自らの非才を恥じる次第です……って出てきちゃダメぇ!」 シェム将軍が生真面目を絵に描いたような顔で頭を垂れると、どうやらテントからちゅーちゅんがほっつき歩いて来てしまったようで、慌てて隠している。
輝く粒子の尾を引く光弾同士がぶつかり合い相殺し、風の刃の衝突で眼下の雲が逆巻き、氷塊と獄炎が互いを消滅させ、宙舞う神器同士が激しく斬り結ぶ。 俺も、僭称者も互いに譲らない。サタンとオフィエルは障壁を五十枚ほど付けて離れさせている。「ふははッ……愉しいぞ、小僧!」 愉悦を表しながら、何やら強大な魔法を発動しようと、両手を胸の前で向かい合わせ巨大な光球を創り出す。それを見て、俺は背後に分厚い障壁を展開する。 既の所で、背後で障壁が砕ける音がした。「見え見えの引っ掛けだな。予備動作ほぼなしで魔法を使える貴様がこれ見よがしに光球なんぞ練りだしたら、バックアタックをしますと言ってるようなものだ」 腕組みして鼻で嘲笑うと、僭称者は愉快そうに口の端を歪める。 再び魔法の乱戦に突入するが、互いに勝機がつかめないでいる。「ルシくん、大丈夫!?」 真横からサタンの声が聞こえ、ハッとする。互角に戦っていたつもりだが、いつの間にかここまで押されていたのか。嫌な汗が滲む。「お前とオフィエルこそ大丈夫か?」 魔法の応酬をしながら二人に声をかける。二人に流れ弾が行くと危険だが、攻撃が激しくなかなか距離を取ることができない。「サタンお姉ちゃんが魔法で温めてくれたから、だいぶ良くなったよお兄ちゃん。ジジイ絶許!」「悪態がつけるなら大丈夫そうだな。妙案がある。ちょっと脳に直接語りかけるぞ」 絶許とか何処で覚えてきたんだ。パパからジジイ呼ばわりに転落とは自業自得よな。そして一度やってみたかった、「脳に直接話しかける」シチュエーション。 余裕があるんだかないんだか判らんが、耳打ちなどして向こうのウォッチャーにばれると宜しくない。 上手くこの策が決まると良いのだが。「行くぞ!」 手を突き出して号令をかけ、回り込むように三方に散る。「何をするかと思えば、ただの挟撃か。つまらん……実につまらん! お前には失望したぞ」 呆れ顔でため息を吐きながら、ぞんざいに三方向へ巨大なエネルギー塊を放ってくる。高速で躱すが、しつこく追尾してくる。振り切れんか! オフィエルがエネルギー塊で消し飛ぶ。それに一拍遅れる形でサタンも消し飛んでしまった。「まあ、それなりに楽しかったぞ小僧。挟撃とはこうやるものだ」 |僭称者《せ
雲だけが広がる光差す世界。眼前であの僭称者が、ふてぶてしく頬杖をついてにやけていた。先程のアロハシャツではなく、いかにも神ですと言わんばかりのキトンを纏い、宙に浮く黄金の玉座に腰掛けている。サタンとオフィエルの姿は見当たらなかった。「何だ、出てきたのか。せっかくお前のための楽園を用意してやったのに」「……貴様という奴は、どこまで人の心を踏みにじれば気が済むんだ! あれからどれぐらい経った! そして、サタンとオフィエルをどこにやった!」 袖口で涙を拭い、一喝する。「教える必要があるか?」「俺の人物眼が確かなら、教える。常に余裕を見せながら風上に立って居たい、貴様そういう奴だ」 指を突き付けドヤ顔で指摘すると、僭称者が鼻で嘲笑う。「呆れた奴だ。まあいい、教えてやろう。天界の牢獄だ。ただし、嘘かも知れんぞ?」 意地悪くにやける僭称者。しかし、そんな挑発に動じる訳もない。「それは貴様の今までの行動と合致しない。貴様は永遠の支配者という立場に飽いている。そこに俺という貴様に対抗する面白いゲームのコマが現れた。戦力の逐次投入などという馬鹿げた真似をして目の前まで俺たちをおびき寄せたのは、エキサイティングなゲームがしたいからだろう? 反吐が出そうな性格をしているな」 奴はにやけ顔を崩さず、手を動かそうとした。危機を察知して一気に距離を開けると、寸前まで居た場所で巨大な爆発が起こる。茶番は終わりということか! そのまま高速で襲い来る光弾を回避しながら策を練る。奴は玉座を降り、ノーキャストで光弾を繰り出しながら猛追してくる。 まず、奴の方が実力的に上手であることを認めねばなるまい。故に俺一人では勝てない。サタンとオフィエルの助けが絶対必要だ。無論、打算抜きで二人を救助したいという気持ちも十二分にある。 ではどうするか? そこでこいつを使う。手を振ると、極小の光点が多数周囲に現れる。俺のためのウォッチャーを創った。こいつらに天界の牢獄を探させる。「征け」 一言命じると、光点が方々に散って行く。実際には命令は要らないのかも知れないが、まあ気分というやつだ。 あとは時間を稼ぐ! 逃げを打ちながら、光弾を放って僭称者を牽制する。さらには
「鈴木くーん!」 秋の心地よい日差しの中、銀杏の繁る市立公園の南口でスマホをいじっていると、正午ぴったりに鈴村の声が聞こえてきた。まめというか、本当にしっかりものだな……などと思ってそちらを見れば、飼い犬の丸子に半ば引きずられるようにして彼女が駆けてくる。 落ち着いたおしゃれという相反する要素をまとめ上げているところに、彼女の人柄がよく出ていた。赤いリュックが特に目を引く。何が入っているのだろうか? 丸子というのは鈴村家で飼われている、でかいシベリアンハスキーだ。そしてこいつがまた……。「わっぷ、舐めるな、舐めるなって!」 異様に俺に懐いている。というか、以前思いっきり腰を振られたことがある。お前、雌だろうが。 しかし、デートと犬の散歩を兼ねるとか、鈴村はどこかずれている部分があるようだ。まあ、これをデートだと考えたのは、俺の一方的な思い込みではあるのだけれど。 ……やはり妙だ。丸子とも何か大事な約束をしていた気がする。本当に、昨日から何なんだ?「鈴村、どこか行きたいところとかあるの?」 妙な疑問を振り払うように、質問をする。「落ち着いて話ができるところならどこでも!」 落ち着いて話がしたいのに丸子を連れてきたのか。やはりどこかずれてるな、彼女は。 ◆ ◆ ◆ カルガモの親子が呑気そうに泳ぐ池の畔で、ベンチに腰掛けることにした。柵に繋がれた丸子が、リード一杯に俺に飛びつこうと頑張っている。本当に落ち着きが無いな、こいつ。 学校のこと、友人こと、教師のこと、将来のこと、新しいアプリ。そんな他愛もない平和な話をお喋りする。「こんにちは、良お兄さん」 聞き覚えのある声に右手を向くと、優ちゃんが居た。可愛らしいフェミニンな子供服に、お下げが映える。彼女は、近所に住む小学生六年生の女の子だ。 ただ、彼女には公然の秘密がある。彼女は、生物学的には男なのだ。しかし、心は完全に女の子であるので、男性化を止める治療を受け、将来的に手術することを望んでいる。そのようなわけで、俺も含んだご近所さんは優ちゃんを女の子として扱っている。「知り合い?」 鈴村が興味深げに訊いてくる。ああ、二人はまだ会ったことなかったっけ。「近所に住んでる優ちゃんって子だよ。小学生だけどしっかりしてるんだ」「はじめまして。私、
122 †漆黒の堕天使†ルシフェル・アシュタロス 2016/11/11(金) 19:34:47 我を崇めよ123 名無しさん@666ちゃんねる 2016/11/11(金) 19:37:32 あ、ルシフェルさんだ! こんばんは!124 名無しさん@666ちゃんねる 2016/11/11(金) 19:39:15 >>122 こんばんは リア充うらやましいっす126 †漆黒の堕天使†ルシフェル・アシュタロス 2016/11/11(金) 19:41:22 >>123-124 うむ。良い心がけだ ……ふう、今日も見知らぬ誰かたちと心地よい挨拶を交わした。黒のルームウェアを着た、666ちゃんねるの名物コテハン『ルシフェル・アシュタロス』こと、俺『鈴木良太《すずきりょうた》』は、PCのキーボードをタイプする手を止め、手元の五百ミリペットボトル入りの「ほ~い紅茶」を一口飲んだ。 少し休憩しよう。椅子を反転させ、自室を見渡す。蛍光灯に照らされた室内には、シングルベッドに本棚にクローゼット。左手の閉め切ったカーテンの上にはエアコン。右手に出入り口のドア。そして後ろにさっきまで使っていた机とPC一式。それだけ。味気ない部屋だが、ここが俺の聖域だ。中二の五月に中二病を発症したが、それがきっかけでブレイクし、すっかり校内の人気者である。もうあれから半年か。 少し目を閉じて、再びPCに向き直る。PC越しに見知らぬ人々にすら敬愛される日々。こんな充実した毎日、いつまでも続かないだろうか。 そんな思索にふけっていると、食事に呼ぶ母さんの声が階下から聞こえてきた。 ◆ ◆ ◆「良太~!」 ダイニングのドアを開けると、突然ハグされた。これもいつもの光景だ。それにしても母さん胸ないよな。「おはよう」 父さんも頭をなでてくる。さすがにちょっと恥ずかしいぞ。夕飯が冷めてしまうよ。特に取り柄らしい取り柄はないけれど、そんな俺を両親は心から愛してくれている。 いつもの光景。おなじみの光景。……でも何だろうか、妙な違和感を感じる。 美味しい手料理を食べた後、めんつゆが残り少ないとのことで、お使いを頼まれてしまった。まあ、ちょうど漫画の立ち読みでもしようかと思っていたからいいけれど。 ◆ ◆ ◆「こんばんは。良くん!」 一軒家を出た







